歴史的快挙へ
2019-01-05


小林陵侑 KOBAYASHI,Ryoyu (土屋ホーム、岩手県出身)が4日のスキージャンプW杯インスブルック大会も優勝して、今シーズン通算とも7勝目をあげた。インスブルックのヒルサイズ(HS)は130メートル。小林は1回目、このHSをはるかに越える136.5mを飛んで首位にたった。同じゲートで始まった2回目は21人が飛び終えたところで飛距離がでないこともあって一旦ゲートが上がった。普通、1回目でヒルサイズを6メートルも超えるジャンプが出たらゲートは下がるものだが、同じゲートでスタートしたばかりか、途中で2段も上がったのだ。小林陵侑にとっては殺人的設定だ。しかも飛びすぎる要素でもある向かい風が吹いている。ゲートが上がって3人目のカミラ・ストッフ(ポーランド、五輪金メダリスト)が131メートルとヒルサイズ越えをしてみせると、ジュリー(審判団)は再びゲートを下げる、それでも1本目で7メートルもの差をつけたクラフトが130.5m。インスブルックのブレーキングトラックはすり鉢状に受けている。どのジャンプ台もヒルサイズまでは安全に着地できるとされているが、その先まで飛んでしまうと、着地は難しくなる。インスブルックは尚更だ。宮平秀治ら日本コーチ陣はゲートを下げる判断をした。W杯、世界選手権、オリンピックなどで導入されているゲートファークター。助走スピードが落ちる低いゲートからスタートすると加点される制度だが、ジュリーの判断でなくコーチリクエストの場合、加点はされない(※注&訂正1)。助走スピードが落ち、飛距離が伸びなくなる。ゲートナンバーはO(ゼロ)。それでも「今、世界で最高のジャンパー」と評されるまでになった陵侑は、見事に2回目最長タイの131メートルを飛んでみせる。ストッフよりも3段も下のゲートからだ。若干のばらつき、乱れはあったが、着地でテレマーク姿勢も入れる。ジャンプ週間3連勝は明らかだった。◆小林はこれでW杯4連勝、今シーズン10試合で7勝、3位2回、7位1回と圧倒的な成績で総合優勝争いでもまたリードを広げた。日本選手のW杯シーズン最多勝利は葛西紀明の6勝だが、陵侑は師匠の持つ記録をシーズン3分の1の段階で塗り替えてしまった。日本人選手のW杯通算最多勝利は同じく葛西紀明の持つ17勝(2019年1月4日現在)だが、この記録にも追いつきさそうな勢いだ。◆まさに快進撃とはこのことだ。スキー界においてはジャンプ週間(Four Hills Tournament)は特別な大会。ワールドカップ制度が生まれるずっと前からジャンパーたちはこのドイツ、オーストリアの4つのジャンプ台で誰が一番強いか競いあってきた。日本選手では1972年に笠谷幸生が3連勝(4戦目は不参加)。1998年に船木和喜が3連勝、4戦全勝は逃したが日本勢ただ1度の総合優勝を果たした。今回、小林陵侑は日本の伝説的ジャンパー、笠谷、船木に続いて3人目の3連勝を達成した。そして、4戦全勝のジャンプ週間総合優勝の期待が高まっている。ジャンプ週間4戦全勝は66年の歴史のなかで、ハンナバルト、ストッフの2人しか成し得ていない。◆ジャンプ週間最終戦は1月6日、ビショフスホーヘンで行われる。【訂正2019.01.08】訂正1)コーチリクエストでもHSの95%、インスブルックの場合は123.5mより飛べばゲートを下げた加点があり、この日4.3ポイントの加点があった。
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